向き変えって何?

11月3日 文化の日、毎年恒例の晴れの特異日がやってまいりました。
おそらく今年最後となるオートポリスに臨みます。

今回のテーマは3つ。
① フロントフォークのセット変更
② 新品タイヤでなくともタイム出す
③ 向き変えの意識

 

 

① フロントフォークのセット変更
先月の走行ではブレーキングでフロントフォークが底付きの兆候を示していました。
これを受けてセッティングを変更します。プリロードを前回より+5mm(+5回転)。その代わり締め込んでいた圧側減衰を弱めます。このセットで1日走り、残ストはこんな感じ。

外から見た位置は今までと変わりません。前回のようなフロント底付きの挙動は感じられなかったので、その点は改善したような…?
プリロードを掛けたことで後半の上りセクションでフロントが入らず曲がらなくなるのではという懸念がありましたが、この点も明確な違いは感じられず…。
うーん、よく分からないけど悪い方向ではなさそう。変化を感じ取るにはもっと極端にセットを振る必要があるかもしれません。次回はプリロードをさらに+3mmくらい試してみます。フルブレーキしても残ストが明らかに余るくらいのセットをとりあえず作ってどのような影響が出るかを確認し、そのうえでちょうどいいところを探りたいと思います。

 

 

② 新品タイヤでなくともタイム出す
タイヤはいつものパワーカップ2で使用時間が2時間ほど。もちろんまだまだ使えますが新品時の絶大なグリップ感はもうありません。タイヤの使用時間が経過するにつれてタイムがみるみる落ちてしまうのが昨今の課題で、今回は2時間使用のタイヤでも自己ベストに近づけるようしっかり集中して走ることが目標です。

 

 

③ 向き変えの意識
全日本ライダーと自分の走行動画を見比べて何が違うか確かめていると(もちろん全てにおいて違うのですが)特にコーナー中盤から立ち上がりにかけて大きな差が生じていることが明白でした。
実はコーナーのボトムスピードは全日本ライダーも僕も大差なく、場合によっては僕の方が速度が高いことさえあります。ただし速い人がボトムスピードで一瞬にして向きを変え、次の瞬間には大きくアクセルを開けて加速を始めているのに対し、僕はいつまで経ってもダラダラとマシンを寝かせたまま加速の態勢に移行できません。

先日見掛けたツイートです。

まさに僕にも当てはまる内容です。速い人はボトムのごく短い時間で素早く向きを変えるから結果的にコーナーリングの時間が短く済み、次の瞬間には鋭く大きく加速していきます。それに対し僕はボトムスピードを落とし切れずマシンの向きが変わらないので、速度は高いけれどコーナーリングの時間が長くその後の加速も遅いというわけです。この点を改善する必要があります。

 

 

1本目
最初は午前中の2B枠。気温17℃、路面温度27℃。

セットを変更したフロントの感触を確かめつつ、向き変えを強く意識して走ります。コーナーで最も速度が落ちるポイントを意識し、そこでしっかり曲げるという取り組みです。具体的にはボトムの区間でアクセルを開けるタイミングをいつもより一拍遅らせます。クリッピングポイントの手前で待つ時間・タメの時間が生じ、必然的にボトムスピードはより低くなります。まさにその瞬間、バイクがググッとインに寄っていく(向きを変える)ことが感じられ、クリッピングに付く頃には大きくアクセルを開けていける態勢が取れました。
今までなら車速が低下することを嫌って向きが変わる前から中途半端にアクセルを開け始めてしまい、その結果

  • いつまでも向きが変わらないし、
  • いつまでもインにつけないし、
  • いつまでもマシンを起こせないし、
  • いつまでも加速に移行できない

というパターンでした。


ところがボトムで少しの間タメを作ることで、急速にマシンの向きが変わって最短でコーナーを通過するV字ラインを描き、なおかつ早い段階でマシンを起こして加速に移行できるのです。
車速が落ち切ったポイントで待つ・タメを作るのは心理的にタイムロスしている感覚に陥るのですが、実はそのことによって

  • 結果的にコーナーを早く処理できて、
  • 早いタイミングでアクセルを開けられるからその後の加速も優れる

という二重のメリットが得られることが実感できました。

 

1本目の走行では以上のような感触を確かめつつ、ブレーキはあまり頑張らずボトムでの向き変えとその後に大きく開けることだけを意識して走ったところ、思いのほかタイムの出方が良く最終周で2分4秒5。

 

 

2本目
お昼を挟み13時からの2B-A枠。気温19℃、路面温度39℃。引き続き午前中と同じテーマで走行します。サスのセッティングも変更なし。

タイムを出したい欲が出てきてコーナーのボトムで待ちきれなかったり、各種の操作がラフになってしまうことがありました。間もなく3時間経過のタイヤは少しずつグリップの低下が見られ、リアがズルズルする場面が増えてきました。それでもコンスタントに4秒台でラップを重ね、ベストは2分4秒0。

 

メーターの数字はこんな感じ。

 

リアタイヤは珍しく少し荒れています。

コーナーでタメを作ると向きが変わる感覚、それが少しだけ理解できたように思うので良い1日になりました。

 

 

結局のところ「向き変え」って何なのよ?
「向き変え」は、フロントの使い方とかライディングフォームとかセルフステアとか、曲がるための技術的な要素も大切だとは思いますが、何よりも

  • コーナーのボトムで一拍待つことでバイクは曲がる
  • 待つことはロスではなく、コーナーを最短で処理する手段

という考え方、走りの組み立てを指すのだと思いました。考え方の問題なので初心者・上級者問わず実践できるテクニックと言えなくもありません。

 

 

そうは言っても待つ時間はなるべく減らしたい
タメを作ることがタイムを出す秘訣だとしても、タメ(ボトムスピードで待つ時間)が長ければその分ロスになることに違いはありません。できればその時間は短くしたい。実際、全日本ライダーの走行を観察するとタメの時間はごく一瞬で直後にアクセルを大きく開け始めています。その走りに少しでも近づくにはどうすれば良いのでしょうか?

 

 

向き変えの手順
向き変えが発生する流れを時系列に並べると、

減速のためのブレーキ(フルブレーキ)
 ↓
コーナー進入のためにブレーキを残す(姿勢作りのブレーキ)
 ↓
ブレーキを完全にリリース
 ↓
荷重がフロントからセンター寄りに移動しフロントフォークが少し戻る
 ↓
向きが変わる(ボトムスピード)
 ↓
クリッピングポイント通過、加速態勢に移行

 

ブレーキを完全にリリースしアクセルもオフ、つまりライダー側は何の操作もしていない状態でエンジンブレーキだけが効いている時、それまでフロントに溜まっていた荷重(重心)がマシンの中心寄りに移動しフロントフォークの沈み込みが少し戻ります(車体姿勢が前下がりからニュートラルに)。その瞬間に向き変えが起こると感じます。ここで車速が落ちれば落ちるほどマシンは曲がります。(間違っていたらゴメンナサイ)

 

 

エンジンブレーキ設定
僕はS1000RRのエンジンブレーキ設定を最小の「1」、最もエンブレが効かない状態にしています。いくつかの設定を試した結果これが僕の走りのリズムに合っていると感じたからです。ところが、それはコーナーでブレーキをリリースした際にエンブレが働かず車体がスーッと前に出てしまう特性です。コーナーのボトムで向き変えをより明確にするなら、もっとエンブレを効かせる制御に変更した方が良いかもしれません。そのことによって待つ時間・タメの時間を短くできるかも? 次回の走行で試してみようと思います。

 

 

最後に
今回の記事は人に伝えることより自分にとっての備忘録的な内容なので、このブログを読んでくださっている方には伝わりづらく、また正確でない内容も含まれているかもしれません。
大切なのは「いま感じたことを次の走行に引き継げるよう記録を残すこと」だと思います。感覚を自分の言葉に変換する作業は重要です。そういう意味合いで書いた記事なので、大目に見ていただけたらと思います。