HYODエアバッグ「AIR-BOOST」

大変ご無沙汰しております。ブログを書く時間が取れず更新が止まっていました。
ブログは放置していましたが僕自身バイクの熱が冷めたわけではなく、むしろ熱が高まってきてしまっています。かれこれ30年近くバイクに乗り続けて、そろそろ飽きても良さそうなのに困ったものです。

 

さて、今回はHYODのエアバッグシステム「AIR-BOOST」についてです。

数年前に「近日リリース予定」とのティザーサイトが立ち上がったきり待てど暮らせど続報がありませんでしたが、ついに発売の目途が立ったみたいです。

まずはネットで見つけたこちらの記事をどうぞ。記事の中段くらいにHYODのエアバッグについて記載があります。

 

 

直営店で話を聞く
自分でも詳細を確かめるべく、HYOD福岡店に行ってきました。

お店には既にパンフレットが用意されており、かなり詳細に話を聞くことができました。

発売時期は6月以降の予定。
価格はエアバッグ本体が税込54,890円で、それに加え年額(または月額)の利用料が発生。いわゆるサブスク方式ですね。
ちなみに他社比較では、

  • アルパインスターズ テックエアレース・・・税込198,000円
  • ダイネーゼ D-air・・・ツナギとセットで税込495,000円~

HYODはサブスクの使用料を加味してもかなり廉価で、この価格帯なら導入を検討するライダーも多いのではないでしょうか。

 

 

AIR-BOOST専用のツナギ「Agility」
AIR-BOOSTはHYODの既存のツナギにも対応しているそうです(一部のモデルを除く)。
そしてAIR-BOOSTに合わせた「Agility」という専用モデルが7月以降にリリース予定とのこと。このエアバッグと専用ツナギは既にロードレース全日本選手権において中須賀選手などがプロトタイプを実戦投入しており、Agilityはその市販版になる模様です。店舗には中須賀選手が実際に使用したツナギが展示してありましたが、エアバッグが膨張した際のスペースを確保するためにシャーリングやニット部分が各部に増やされていました。価格は既存モデルより数万円高くなるそうですが、エアバッグと同時にツナギも新調するなら迷うことなくこのモデルを選ぶべきでしょう。

 

 

重量
AIR-BOOST本体の重さは1.5kgと記載してあります。まだ実物を手にしていませんが、この重量なら着用して重さを感じることは少ないと想像しています。
現在、僕はアルパインスターズのテックエアレースをRSタイチのツナギに組み合わせて使用しているのですが、通常のツナギよりも遥かに重くツナギを片手で持ち上げるのが困難なほどです。着用してしまえばそれほど気にならなくなるとはいえ、もう少し軽量で動きやすいエアバッグシステムがあれば…と常に考えていました。AIR-BOOSTとAgilityの組み合わせがその悩みを解決してくれることを期待せずにはいられません。

 

 

エアバッグ作動後のメンテナンス
ダイネーゼやアルパインスターズは転倒してエアバッグが作動した場合、一旦お店に預けて再度使用できるようメンテナンス(ボンベの交換など)を受ける必要があります。しかしAIR-BOOSTはライダー自身がその場でインフレーター(ボンベ)を交換出来るシステムで、予備のインフレーターも販売されるとのこと。エアバッグ作動後に使用できない空白期間が生じないというのも大きなメリットに感じます。

 

 

ストリートで使用できる
AIR-BOOSTはツナギだけでなく、ツーリング時の一般的なジャケットの下に着用することも出来るそうです。このような安全装備はサーキットはもとより、公道にこそ求められると思います。比較的安価で軽量という特徴は、ツーリングライダーにも強く訴求する部分ではないでしょうか。

 

 

購入を検討中
というわけで僕は専用のツナギとセットで購入を考えています。もともと最初に購入したツナギがHYODということもあり、このメーカーには馴染みがあります。九州には直営店があってアフターサービスも含め安心して使える点も大きなポイントです。
今後の続報を待ちたいと思います。

 

 

他社製は?
ちなみに僕はエアバッグ歴が結構長く、ヒットエアーの有線式を使い始めたのが2013年。それから10年の間に延べ3社の製品を使ってきました。自称エアバッグマニアを名乗っても良いレベルです。
以下、これまで使用したエアバッグについて簡単にまとめておきます。

 

 

ヒットエアー RS-1
ワイヤーで車体と繋ぎ、転倒してライダーが車体から離れるとワイヤーが引っ張られてエアバッグが作動します。他の無線式エアバッグと比べ安価で導入しやすい点がメリットですが、ツナギの上に着用するので見た目がちょっと残念、走行のたびにワイヤーの付け外しが煩わしい(ルマン式スタートだと確実に遅れを取る)というデメリットがあります。

 

 

アルパインスターズ テックエアレース
現在使用中のエアバッグ。対応するツナギに装着して使用します。僕はRSタイチのツナギを選びました。ヒットエアーと違いエアバッグ本体がツナギの内側に収まり、ワイヤーもないので外見は通常のツナギと変わりません。内蔵されたセンサーが転倒を検知すると自動的にエアバッグが作動する仕組みです。センサーはバッテリー式で定期的な充電が必要。

見た目がスマートで、エアバッグの保護範囲がヒットエアーより広く安全性が高い点がメリット。一方、専用のツナギと合わせて約40万円と高価で、非常に重く通気性が悪いため特に夏場の着用が厳しい点がデメリットです。

 

 

ダイネーゼ D-air
ダイネーゼは専用のツナギと一体化されています。ワイヤーがなく内蔵センサーで転倒を検知する仕組みはアルパインスターズと同様。
今のところ僕が唯一作動させたことのあるエアバッグです。オートポリスのターン17(最終手前の右コーナー)進入でフロントからのスリップダウンでした。そこそこ速度が乗っているコーナー(ボトムで100km/h前後)ではありますが、手首の打ち身くらいで大きな怪我をせずに済んだのはエアバッグの効果も確実にあったと思います。

ダイネーゼの欠点は高価であることと、ツナギが基本的に既成サイズ(吊るし)で購入するしかない点です。サイズオーダーも出来るようですがかなり高額になってしまうので、ちょっと現実的ではないと感じます。
僕はダイネーゼの直営店でタイトフィットを推奨されて、促されるまま小さめのサイズを選んだところバイクの上で体が動かしづらくなってしまいました。しばらく我慢して使っていたものの結局着用を断念した経緯があります。これは僕の体型が既成サイズに合わない部分があることも原因で、サイズオーダーしなかったことが失敗でした。
ダイネーゼに関しては自分の体型が既成サイズに合うこと、そして店舗が推奨するタイトフィットを装着しても体の動きが阻害されないことを十分に確認したうえで購入した方が良いと思います。
ツナギそのものは使い始めから革が柔らかく、各部ジッパーの動きも良いなど品質の高さを感じました。サイズ感さえ合えば所有欲も満たしてくれること請け合いです。

向き変えの具体例

「向き変え」は今の自分にとって最重要テーマなので、画像を使って具体例を示しながら考えていきたいと思います。
場所はオートポリス、最終手前の右コーナーです。

 

 

画像①

走行動画から、このコーナーで最も速度が落ちた時点を切り取りました。画面右下に表示されているのはGPS計測による速度で、このラップでは104km/h。

 

画像②

画像①の続きでコーナーのクリッピングポイントに到達したところです。イン側に見えるゼブラの切れ目付近がクリッピングポイントです。この時、右下の速度は106km/h。画面中央下、メーターに表示されるバンク角は49°です。まだバンク角が深く加速の態勢に入っていません。

 

画像③

さて、画像③は上記①②と別のラップです。場所は同じコーナーで①と同様に最も速度が落ちた時点。この時のボトムスピードは96km/hで、①の時より8km/h低くなっています。

 

画像④

③の続きでクリップに到達したところです。画像②と全く同じ場所ですが、見比べるとラインが②よりイン側を通っています。さらにメーターのバンク角を見ると43°で、既にマシンを起こし始めて加速の態勢に移行していることを示しています。この時の速度は115km/h。②と比べると9km/h高くなっています。
一見すると②と④は同じような画像に思えますが、この瞬間におけるマシンの状態及びライダーが行なっている操作は全く異なっています。端的に言えば②はまだ向きが変わっておらず、④は既に向き変えを終えている状態です。

 

 

区間タイム
画像①②と画像③④でこのコーナーの区間タイムを見ると、①②はボトムスピードが高いぶんコーナー中盤で速い瞬間がありますが、③④はボトムで向きが変わるため中盤以降マシンを起こしながらグイグイと加速していき、クリッピングポイント到達時点で①②と③④はほぼ同タイム、そしてクリップ以降の立ち上がりは③④が明らかに速いという結果でした。

二つのラップは全く同じコンディション(同日の同じ走行枠)であり、両者の違いはただ一つ、「コーナーで向きが変わるまでアクセルを開けずに待てるかどうか」それだけです。

 

 

速度グラフ
両者の違いをグラフで見てみましょう。

ちょっと判りづらいですが水色の線が速度グラフ。薄い水色が①②、濃い水色が③④のラップです。
①②はボトムスピードが高く向きが変わらないため、いつまでもダラダラと加速できず逆台形の速度グラフとなっています。一方で③④は一旦速度を落とし切ってボトムからすぐに加速に移行しています。その結果コーナーの出口では両者に埋めがたい速度差が生じているのです。
同じバイクなのに上手い人が乗ると立ち上がりで(まるでエンジンパワーが違うかのように)グングン加速して差がつく、という現象を誰しも経験したことがあると思います。上のグラフはその理由を示しています。(本当に速い人のグラフはもっと顕著に特徴が現れるはず)
繰り返しになりますが、この違いを生み出しているのはただ一つ、コーナーで待てるかどうかだけです。難しいテクニックなどどこにもありません。

 

僕の場合、コーナーに進入したらすぐにアクセルをわずかに開け直す癖が昔からあります。少しでも速度をロスしたくないという心理から来ていると思いますが、それが上記の逆台形グラフを作る原因となっています。
今回は最終手前の右コーナーを例に挙げましたが、特定のコーナーに限らずほとんどのコーナー(オートポリスに限らず)で当てはまる内容ですから、この点を改善することが今の最優先課題です。

 

向き変えの関連記事はこちらです。

オートポリスの走り方を再考

オートポリスの走行動画をツイッターに上げたところ、色々な方から示唆に富むアドバイスをいただきました。

このツイートに寄せられたアドバイスや、リアルでお会いした方からのお話を自分なりに解釈し直したうえで、オートポリスの課題をまとめます。

 

 

① 全体的にコース幅を有効に使えていない
【問題点と原因】
ほとんどのコーナーにおいてクリッピングポイントでインに寄せ切れていない。進入もアウトにもっと寄せられる。現状はコースの中央付近しか使わずに走っている。

【対策】
そもそも自分の中でライン取りの意識が低い。優先順位を上げて取り組む。
クリップでインに付けない原因の多くはボトムのスピードを落とし切れていないこと。各コーナーで自分の感覚より5~10km/h速度を落とすところから始めたい。

【目指すこと】
アウト~インを目一杯使うことでコーナーの曲率を緩やかにする。極めて基本的なことだけれど、それができていない。
またクリップでインに付けない=大回りしている=走行距離が伸びる、であり距離的にタイムをロスしている。最短距離を通過することでタイムが短縮される。

 

② 3コーナー進入でアウトに寄せ切れていない
【問題点と原因】
進入のブレーキで無意識にスルスルとイン側に寄ってしまい、寝かし込みがミドルからとなっている。

【対策】
ブレーキングは寝かし込みのポイントまでアウト側で我慢して、そこから一気に寝かしてコーナーに入る。

【目指すこと】
アウトから進入することでコーナーの奥が見通せるようになり、かつクリップを奥に取ることで加速区間を作れるし、続く4コーナーに対してアプローチしやすくなる。

 

③ タイトコーナーの開け始めが重要
【問題点と原因】
ヘアピンや1コーナーなどのタイトコーナーにおいてコーナーリングスピードが高過ぎるため向きが変わらず、立ち上がりでアクセルを開けられていない。

【対策】
より多く減速してボトムスピードを落とし、向きをしっかり変えてからアクセルを開ける。どんなコーナーでも「ここまで速度を落とせば向きが変わってインに寄っていく」スピードがある。そこまで我慢できずに中途半端にアクセルを開け始めてしまうのが元凶。

【目指すこと】
向き変えの時間を作ることで今までより早くマシンを起して全開にできる。GPSロガーの速度グラフがV字を描く(現状はU字または逆台形になっている)。

 

④ コーナーの進入に迷いがある
【問題点と原因】
進入時に最終到達点が確定されておらず、コーナーに入ってから軌道修正して最終到達点に“移動”している。加速前までの減速度にムラがある、速度グラフでは二段減速になっている。

  ↓

最終到達点すなわちクリッピングポイント(CP)に向かってどのように到達するかイメージできていない。CPの場所が明確でないし、CPまでどのような操作で進むのかもイメージできていない。
またダブルクリップを取るコーナー(1ヘア後の左100Rや最終手前の右)では進入速度を上げて一旦アウトにはらんでからインに戻る走りを模索しているが、まだ走り方が確立されておらず進入速度とラインが安定していない。

 

⑤ 1コーナーは減速しすぎて調整している
【問題点と原因】
④と重複する課題だが、1コーナーに関してはブレーキで止まり過ぎている。

【対策】
まずはいつも通りのブレーキで、寝かし込みの手前でいつもなら減速しすぎでブレーキを緩めているところを、緩めず減速し続けて寝かし込んでみる。
  ↓
全力で曲がろうとすれば、当然インに付きすぎて(イン側に)コースアウトしそうになる。
この状態をまず確認する。
  ↓
曲がる時の速度を底上げすることでコーナーリングの円弧が大きくなるので、CPに付ける。
具体的にはブレーキの強度を少し緩くして、寝かす場所は一緒。(または怖ければ少し手前から寝かしても良い)
  ↓
現状だと1コーナーのブレーキングはマージンを多めに残しているので、もう少し詰められる。ブレーキングポイントはピット出口のゼブラゾーン先端を基本としつつ、少しずつ奥にずらす。ただしその日の気温や風向きでストレートの最高速は変わるので、当日のコンディションを見極めてから少しずつやる。
  ↓
仮想CPをインから30~40cm外側に設定すると気が楽になる。これならインに突っ込み過ぎても不足でも路面が存在する。30~40cmインから余っていても許容範囲。

1コーナーのブレーキングポイントに関する記事はこちら。

 

⑥ 1コーナーでフルバンクの後すぐにもたもたと加速方向に探るように使っている
【問題点と原因】
寝かし込んだ後、速度を保ちたいという気持ちからすぐにパーシャルにアクセルを当ててしまうため、なかなか向きが変わらない。

【対策】
全開できる向きに変わるまで、アクセルは完全オフで待つ方が安全。

【目指すこと(⑤⑥共通)】
1コーナーは(無理のない範囲で)ブレーキの精度を上げる。
どこにCPを取るか、またそのCPでどこまでインに寄るか明確なイメージを持つ。
寝かし込んだら慌ててアクセルを開けず、向きが変わるまで完全オフ。速度グラフがV字になるように。

 

⑦ 2ヘアは大回りし過ぎ
【問題点と原因】
ブレーキで突っ込み過ぎ、またコーナーリングスピードが高過ぎてクリップでインに付けず大回りしている。

【対策】
2ヘアのブレーキはもう少し余裕を持たせて進入速度を落とし、寝かし込んだらアクセルオフ(すぐパーシャルにしない)でボトムスピードも落として向き変えを待つ。

【目指すこと】
クリップでしっかりインに寄って最短距離を通り、かつ現状より早いタイミングでアクセル全開にする。速度グラフはV字に。

 

⑧ 登り区間 右・右への進入で切り返しが遅れている

【問題点と原因】
手前の左(80R)で向き変えが足りずアウトに膨らんでいるため、苦しい切り返しになっている。切り返しが遅れて右・右(60R→50R)で大回りしている。
また切り返し動作そのものが遅い。

【対策】
ジェットコースターストレートから2つ目の右(90R)はアウトに膨らまずミドルで我慢して次の左(80R)に切り返す。ここでアウトに膨らむとその後の上り区間全てに影響する。
左(80R)は向き変えを強く意識して出口までコース中央より左をキープ。続く1個目の右はインをかすめるが、進入でミドルからインに向かうラインを取る。
切り返し動作を全力でやる。

【目指すこと】
現状、1個目の右はインをかすめるがアウトに向かうようなラインとマシンの向きになっている。
手前の左(80R)でしっかり向きを換えることで、1個目の右の進入からマシンがインに向いた状態となり、2個目の右に向かって速度を落とし過ぎずかつアウトに膨らみ過ぎず通過できるようにする。

 

⑨ その他

  • ブレーキの握り方は色々試す。このコーナーは強く握りたいので4本握り、というのもアリ。
  • 開けていくところで躊躇している。開けられる自信を身に着ける。

 

 

まとめ
現状の課題をまとめると、大きく二つに分けられると考えます。

  1. ライン取りの意識が希薄なのでより明確にイメージする。ラインだけではなく、どのような操作をして、マシンがどのような状態でどのラインを通過するかまで具体化する。
  2. 自分の曲げる能力に対しコーナーリングスピードが高過ぎる。寝かし込んでからすぐにアクセルを当てる悪癖がある。ボトムで待って向きを変える。

 

向き変えに関しては次回の記事でもう少し掘り下げます。