新型S1000RR 2023年モデルが発表されましたね。
BMW MOTRRAD(本国)をはじめ複数のサイトから情報を整理すると、主な変更点は以下の通り。
- 3馬力アップ
- フレームの改良(横方向の剛性ダウン)
- フロントフォークのオフセット変更
- 電子制御の改良
- ウイング追加、アッパーカウル変更
内容的にはS1000RRの新型というよりM1000RRの廉価版・普及版といった印象です。というのもM1000RRの構成を引き継いでいる箇所が多いからです。
エンジン
馬力アップといっても、従来の207psが210psになったところで体感できるほどの違いはないだろうと思います。
M1000RRのエンジンはSと明らかに違うと聞きますが、それは用途を限定したホモロゲモデルとして追い込んだ仕様だからこそで、普及型のSがMと同じエンジンになるとは考えにくいです。
フレーム・サスペンション
ディメンション的にはM1000RRと同じになったみたい。SとMではハンドリングが結構違うようなので興味深いところです。あとフレームの剛性を落とすのは最新のレース現場のトレンドですね。(これもMから?)
ちょっと確認できなかったのですが、リアサスのリンクはどうなったのでしょう? ここもMで変更された箇所です。現行S1000RRの純正リアサスはコーナー立ち上がりの加速で挙動を乱しやすく、それが数少ないネガの一つとなっています。
電子制御
加速時のスライドコントロールとブレーキ時のリアスライド抑制機能(ドリフトコントロール)が追加されたそうです。進入スライドなんて一般ライダーには関係ないと思いがちですが、フルブレーキの際にリアの接地感が薄れて挙動を乱す、あるいはコーナー進入時にフロントに過度に荷重が残ったまま寝かし込んでリアがアウト側へわずかに流れる、といった現象は意外と多くの人が経験していることと思います。特に後者は悪くすると進入ハイサイドに繋がる恐れもありますから、そうしたリスクを軽減する制御であるなら一般ライダーでもメリットは大きいと思います。
ウイングとアッパーカウル
サーキットを走る場合は効果があるんでしょうね。身近な所でいえばHSR九州のバックストレートでフロントが浮きにくくなるとか、オートポリスの12コーナー(ジェットコースターストレートから2つ目の右)でフロントの接地感を得やすいとか。ウイングを体験したことがないので想像に過ぎませんが、実用面ではきっとメリットがあるのでしょう。
ただ、機能性を抜きにして見た目の話をすると、ウイングってデザイン的には不純物以外の何物でもないと思うんですよ。カタマリ感のある端正なシルエットは現行S1000RRの大きな魅力だったのに、ウイング(としゃくれたアゴみたいなアッパーカウル)が加わることで全体のバランスが崩れ、下品な姿に成り下がってしまいました。
これがM1000RRであるならレースで必須のパーツとして理解できます。多くのレギュレーションでカウルは純正と同等の形状を維持しなければならないと規定されており、市販状態でウイングを備える理由がそこにあります。しかしもはやホモロゲモデルでもないS1000RRにその必要はありませんから、この部分に関してはMと差別化を図っても良かったのではないかと思うのですが…。
世の中では僕みたいなウイング否定派のほうが少数でしょうから「ウイング、カッコイイ! レーシー!」と感じる大勢に向けて訴求効果を狙ったデザイン、ブランディングの一環という側面はあるのでしょう。現行S1000RRで街乗りしかしない(ウイングの性能的な恩恵を決して得ることがない)のにハリボテのウイングを後付けして喜んでいる層が一定数存在するわけですから。250ccのフロントブレーキにダブルディスクを装着するのと似たようなものです。
ちなみに空力デバイスの先駆けであり最先端を行くMotoGP、お馴染みドゥカティのデスモセディチ。
昔から速いマシンはカッコいいと言われますが、現在最速の呼び声が高いドゥカティのマシンはどうでしょうか。
今シーズン終盤にはテールウイングまで登場して伊勢海老と称されるほどに。
これをカッコいいと感じるか醜悪と感じるかは人それぞれですね。
2022/10/13追記 M1000RRの新型も発表されました。