デイトナ675R 私的総括③

デイトナ675R 私的総括②からの続きです。

 

第二のスランプ
マシンは転倒前と遜色ない状態に戻ったのですが、復活後のタイムは低迷を続けます。当初は転倒のイメージが頭から抜けず慎重になっているせいだと考えていました。しかしその後いくら走り込んでも調子は上向かずタイムはむしろ悪化する一途。再びスランプの泥沼に浸かってしまいました。

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不調からの脱出
このスランプから抜け出したのは、転倒から丸二年が経過した2018年の春のことでした。きっかけは前年の冬に受講したRSGスクール。インストラクターの国際ライダーに僕の675Rを試乗してもらったところ「リアが不自然なほど高過ぎてまともに乗れたものではない」と指摘を受けました。ここで思い当たったのは2016年に転倒する直前、リアサスに4mmのスペーサーを装着しリア車高を上げていたことです。

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もしやこれが原因では…? 早速ショップに持ち込んでスペーサーを取り外してもらい、ノーマルの状態に戻します。すると寝かし込みの際にそれまで拭えなかった不安感・居心地の悪さがすっかり影を潜め、安心して荷重できる(脱力してマシンに自分の体重を委ねられる)ようになったではありませんか! 転倒する前は当たり前に出来ていた感覚が甦ってきました。

 

 

 

転倒の原因
今にして思えば2016年の転倒は、このスペーサーをはじめ極端に前下がりの姿勢を作ってしまい車体のバランスを崩したことが原因でした。転倒したからスランプになったのではなく、その前から間違った状態に陥っていて、しかし当時はイケイケでそのことに気づかず突っ走った挙句、転倒に繋がったということだと思うのです。
あの時僕は転んだ理由が分かりませんでした。ミスを犯した覚えもないし、むしろブレーキから寝かし込みまでスムーズに繋げることができて、良い感じでコーナーに入った手ごたえがありました。しかし次の瞬間、足元をすくわれるようにスリップダウンしたのです。操作ミスでないとすれば行き過ぎた前下がりセッティングが災禍をもたらしたと考えるほかありません。
これが分かるまで2年を要しました。2年はとても長い時間です。同じように走り込んでいる人ならその間に自己ベストを何秒も短縮している、それくらいの時間です。転倒前の走りと現状のギャップに悩み続け、しだいに半ば諦めの気持ちを抱きながらそれでも走り続けた結果、ようやく解決の糸口を見出すことができました。

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フロントフォークのスプリング変更
その後、HSR九州で自己ベストを更新するまでに復調し、自信を持って乗れるようになりました。ただしフロントサスが奥まで入りきらず今一つ旋回性が足りない不満も抱えていました。そこで2014年からほぼ毎年お世話になっているレイラスポーツに相談し、フロントのスプリングレートをノーマルから10%ほど下げる(柔らかくする)ことに。

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HSR九州で目標タイムに到達
スプリングレートの変更は正解で、フロントはきっちり奥まで使えるようになりネガも感じません。とりわけ新品タイヤを履いた時のフィーリングは最高で、いつもの感覚で走っていると曲がり過ぎてイン側にコースアウトしそうになるほど。結果としてHSR九州で長年目標としていた1分10秒切りを達成できました。ここまでの紆余曲折を思うとなんか遠い目をしたくなる瞬間でした。

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ライディングの変化
2016年の転倒前と現在では同じ675Rでもマシンの印象は変化していて、ライディングもそれに合わせたものに変わっています。転倒前はとにかくよく曲がるバイクという印象で、タイムはコーナーリングで稼ぐ意識がありました。今は旋回性よりもブレーキの安定感が強みで、以前より自信を持って握れるようになっています。タイムもコーナーよりその手前のブレーキで稼ぐ意識です。
共通しているのはフロントのスタビリティの高さ、安心感。昔はそれをコーナーリングに生かそうと考え、今はブレーキに生かそうとしています。

 

 

 

デイトナ675Rの車体姿勢
以前はひたすら前下がり指向で、

  • フロント・・・突き出しを増やす
  • リア・・・スペーサーを入れてプリロードも掛ける

と、どんどん過激な方向に進んでいきました。


今は、

  • フロント・・・突き出しをノーマルよりやや減らす
  • リア・・・プリロードをノーマルより抜く

以前と真逆の方向です。もしこの二つで乗り比べたなら印象は大きく違うものになるはずです。僕が正解だと思うのはもちろん後者です。

 

僕は09年式(センターアップマフラーの後期型)にも乗っていましたが、14年式(最終型)と共通して言えるのは、デイトナ675はノーマルで前下がりの傾向が強いということです。この点を理解してセットアップすれば、サーキット・街乗り問わずグッと乗りやすい車体になると思います。

 

 

 

最後に
以上、2014年から現在までの歩みを振り返ってきました。6年間のうちスランプの期間が3年半と半分以上を占めています。正直なところ楽しい思い出より悩み落ち込んだ思い出の方が多いと感じます。
それでもこのバイクはライディングとは何か、サスセッティングとは何か、そしてバイクとは何かを教えてくれたオンリーワンの相棒です。随分と遠回りをしたと思いますが、その遠回りの過程こそが得難い経験でもあるのです。

 

また、675Rはトラブルの少ない車両でした。サーキットで酷使し続けたにもかかわらず重大な故障は皆無。ちょっとしたトラブルはありましたが、その都度ショップが迅速かつ誠実に対応してくれたのでいつも安心して乗ることができました。しっかりとしたショップに預けてさえいれば、信頼性は国産車に比肩します。SNS上ではデイトナが壊れやすいみたいなレッテルを貼る投稿も散見されますが、その多くはメンテナンス不足が原因であるように感じます。
もし、これからデイトナ675に乗ってみたいと思う人がいたとしたら、まずは信頼に足るショップを選ぶことが肝心です。それさえ間違わなければ(僕のように回り道して悶えるかもしれませんが)素晴らしいバイクライフが待ち受けていると確信しています。

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