Z900RS

カルガモのヒナが初めて見た物を親だと思い込み後を追いかけるように、バイク乗りにとって若い頃最初に憧れた1台は年齢を重ねても永遠に憧れの対象であり続けるものです。昨今のネオクラシックブームは40代以上のライダーのこうした傾向が根底にあると思いますが、その中で真打ちともいえるカワサキ・Z900RSのデリバリーが開始されました。僕も強い関心を寄せている1台です。

f:id:sundayrider:20171209142042j:plain

僕がバイクを乗り始めたのは90年代、ゼファーに端を発するネイキッドブームの時代。Z900RSはZ1のオマージュだと言われますが、僕にとっては世代的にゼファーの姿を重ね合わせてしまいます(ゼファーもZ1/Z2のリバイバルなのでしょうが)。いずれにせよやっぱりネイキッドこそがバイクの王道だよね、というのが僕の若い時に刷り込まれた価値観です。
しかしZ900RSは一見オールド風ながら、車体構成は旧来のネイキッドと全く異なるものです。

f:id:sundayrider:20171209121754j:plain

ネイキッドを定義するなら、

  • 丸目一灯
  • ダブルクレードルフレーム
  • フロント正立フォーク
  • リア2本サス

といったところでしょうか。このうちZ900RSが当てはまるのは丸目一灯だけ。特にリアがツインショックかモノサスかというのはネイキッドを語るうえで重要なポイントで、Z900RSのリア周りの造形を受け入れられるかがこのバイクの評価の決め手となりそうです。
もう一つ、個人的に残念なのが水冷エンジンにフィンを追加している点です。バイクの美しさ、格好良さは機能美だからこそ。必要な機能を満たすために造られたパーツの姿かたちを結果的に我々は美しいと感じるのであって、見た目ありきで後付けされたギミックに心を動かされることはありません。

 

一方でこうした外観のこだわりから視点を移すと、現代的な装備で身を固めたこのモデルが高い走行性能を有していることは想像に難くありません。倒立フォークにリアはリンク式モノショック。ラジアルマウントのブレーキキャリパーにスリッパークラッチ、電子制御でトラクションコントロールまで備わっているというではありませんか。車両重量はこのジャンルとしては軽量、見た感じバンク角も確保されているようで、サーキットに持ち込んでもそれなりのタイムで走ってしまいそうな予感があります。スポーティで乗っていて純粋に楽しいと思えるマシンに仕上がっているのでは、と期待せずにいられません。

f:id:sundayrider:20171209142246j:plain

思うにカワサキはこのZ900RSを、Z1のオマージュあるいはレプリカとして生み出したのではなく、あくまで現時点で最先端・最良のスタンダードバイクを造り上げ、マーケティング上ボリュームゾーンである40代・50代の嗜好に合う外観を与えた、というのが本当のところではないでしょうか。そうして出来上がったZ900RSを懐古主義ではなく新時代のネイキッドとして提案していると考えれば、まことに好感を持って受け止めることができます。

f:id:sundayrider:20171209142305j:plain

以上、発売されたばかりの話題のモデルについて所感を述べてみました。いずれ所有したいと思わせる候補の一台です。