前回のオートポリスは、SPA直入でとりあえず50秒切っとくかみたいな走り、つまり走りの組み立てとかライン取りとか何も考えず勢い任せの走りでとりあえず2分10秒を切ったので、ひとまず安堵したところでした。
しかし、おととし転倒する前、オートポリスやSPA直入で自己ベストを更新していた頃と比べるとライディングの感覚は随分と違います。2年前はマシンの動きと頭のイメージがある程度シンクロしていて、自分なりにイケイケで走っていました。対して今は、タイム的には当時に近づきつつありますが、良いタイムが出てもそれは「たまたま」という気がして、次もそれを再現できるとは思えないのです。要するに自分の走りに自信が持てません。
このような今の状態が良い事なのか悪い事なのかはわかりませんが、2年前と今で何が違うのかを理解することが、今後の成長のカギになるように感じています。
バイクに乗る時の恐怖心とどう向き合うか
さて、世間的には三連休の真ん中、9/15のオートポリス。快晴です。
自信が持てない現状を打破するには、転倒に対する心理的なハードルを少し下げる必要があると考えました。転倒を過度に恐れないということです。
本来、恐怖心というものは根源的な感情ですから、克服しようとしてできるものではありません。ただし転倒に関する恐怖は以下の内容に分類することができます。
① マシンが瞬間的に制御不能となることへの反射的な恐怖
② 転倒して痛い思いをする身体的な恐怖
③ バイクが損傷することに伴う経済的な恐怖
④ 怪我によって仕事や生活に支障が出ることへの社会的な恐怖
このうち①と②の恐怖は本能的なもの、また過去の経験から刷り込まれたものであってコントロールすることはできませんし、そもそもそれをコントロールするという考えは正しいものではありません。
対して③と④は転倒後に発生する、恐怖というより後悔のようなものですから、そこに対する自制心は理性的に調整が効く範囲です。
具体的には、
③ 675Rは5年以上乗って近く買い替えも検討しているのだから、もし転倒して廃車になっても懐はそんなに痛まないじゃないか
④ 怪我して普段の生活に支障が出ることは避けなければいけないけれど、ハイサイドはともかくフロントからのスリップダウンなら大怪我はしない(と言い聞かせる)
このように考えることで、過度な慎重さに歯止めをかけるという発想です。こうしてまずは難しいことを抜きに、走りに勢いを持たせること。しっかりアクセルを開ける、しっかりブレーキを握る、しっかりマシンを寝かし込む、をテーマに走ろうと考えました。これが一番難しいことかもしれませんが…。
1本目で2分7秒7。2本目でタイムアップを目指すも、クリアが取れず8秒フラットどまり。ただ、クリアが取れていれば少なくとも7秒前半には入っていた感触はありました。
走行後のタイヤ。レーステックRR。フロント(K1)はやや荒れてきました。
2年前の転倒時と同じような荒れ方で少し不安になります。ただこのタイヤは既に6時間以上走行していることを考慮すべきかもしれません。
リア(K2)はいい感じ。
2年前と今は何が違うのか
2年前の自己ベストは2分6秒3。今回は7秒台。状態の良いタイヤを履けば6秒台には入りそうなので、タイム的には大きな差はありません。
しかし走りの内容は全く違っていることに気づきました。2年前に675Rの強みとして感じていたのは旋回性の高さで、自分のイメージ通りのラインをある程度は通ることができていて、コーナーリングの俊敏性でタイムを稼ぐという意識がありました。
ところが現在は慢性的にアンダー気味でクリップを外しがち。自分のイメージより1本外側のラインを走っている状態で、コーナーで待つ時間が長く感じます。その代わりブレーキに安定感があってしっかり握り込めるため、以前より進入で突っ込んでいけるようになっているし、多少突っ込み過ぎてオーバースピードでも落ち着いて対処できる強みを感じます。ブレーキでタイムを稼いでいる感覚です。
そこで足回りのセッティングを見ると2年前と今ではまるで違っていることを思い出しました。かつてはフロントの突き出しを思いっきり増やし、リアはスペーサーを入れて車高を上げる。結果、極端に前下がりな姿勢になっていました。旋回性は上がっていたかもしれませんが、行き過ぎた前下がりの辿り着く先は2年前のあの転倒です。
現在はその頃のセットと比べるとフロントの突き出しは9mm減らし、リアはスペーサーを外して車高を4mm下げ、さらにイニシャルも2mm抜いています。つまり旋回性重視の極端な前下がりから、フラット~やや後ろ下がりの安定志向へと車体のセットアップが変わっているのです。そのことを意識して走っているわけではないのですが、結果的にライディングも今のマシン特性に合ったかたちに変化していったようです。
そして冒頭に書いた今の自信の無さは何が原因かと考えた時に、安定重視の車体姿勢でコーナーを大回りしがちであるゆえに、自分のイメージ通り走れない居心地の悪さから来ているのではないかと思うのです。
レースで結果を出すことが目的ではなく、スポーツ走行そのものを楽しむファンライドというスタンスの場合、気持ち良く走ることの延長線上にタイムが出て欲しいと考えるのが心情というものですが、場合によってはそれらを切り離して考えるべきなのかもしれません。俊敏なコーナーリングで速く走るという自分の理想はひとまず脇に置いておいて、現状の車両特性に合わせてタイムを出すポイントを探ることも、ファンライドの一つのかたちではないかということです。
そのような考えのもと、今の675Rでもし自己ベストを更新できれば、それは自分の走りの幅が広がった結果と胸を張っても良いかもしれません。