BMW S1000RRの現行モデル(K67)を試乗しました。
ポジション
イマドキのSSらしく大きく開いたハンドルが特徴的ですが、実際に跨ってみるとさほど違和感はありません。むしろハンドルが体に近くコンパクトなライディングポジションで、前傾姿勢も穏やかな部類。4気筒1,000ccということで大柄なポジションを想像していたのですが、良い意味で裏切られました。
シート高は824mm。デイトナ675は830mmなのでそれよりも低い数値。オプションでハイシート(849mm)があり、サーキットではそちらの方がしっくりくるかもしれません。
エンジン
エンジンを掛けると、ガラガラガラ…と少々ガサツな音が響き渡ります。音量がかなり大きく、これで良く車検が通るなというレベル。
低速トルクはおろそかにされておらず、発進時にさほど気を遣うことなくスルスルと車体が進み始めます。
試乗は少し長い時間乗っても構わないとのことだったので、都市高速を1周することにしました。本線に合流して少し大きめにスロットルを開けると、アイドリング時のガラガラ音は鳴りを潜めてスムーズな吹け上がりを見せます。8,000回転までしか回さなかったのですが、中速域でもひとたびワイドオープンすれば怒涛の加速。本当に凄まじい推進力で、10,000回転以上ともなればどうなってしまうのか、サーキットでも開けることに躊躇してしまうのではないか…そう思うほどでした。
それでいて扱いにくさは皆無で、普通に開ければごく普通に走るフレキシブルさです。
足回り、ハンドリング
都市高を軽く流す程度でしたので、シロウトの僕が車体特性について何か理解できたわけではありません。
とはいえ軽く流す程度であれば車体は軽快で、エンジン同様に気難しさを感じません。試乗したのはDDC(電子制御サスペンション)付きで、サスは前後とも思いのほかよく動いていることが感じ取れました。
リアサスは独特なアッパーリンク。
失われるスピード感覚
現行S1000RRを試乗した印象を簡単にまとめると以下のようになります。
- 扱いやすいのに一捻りでワープするような加速を見せるエンジン
- 意外にも良く動いて公道でも突っ張った印象がない足回り
- コンパクトで違和感のないライディングポジション
- ライダーに当たる風の影響を上手にいなしてくれる、出来の良いカウル
これらによって(恐るべきことに)乗り手の正常なスピード感覚は失われていきます。60km/hくらいで走っているつもりがメーターを見ると100km/hを超えていたり。同じく100km/hくらいで走っているつもりが、メーターはそれよりずっと高い速度を示していたり。
他のバイクならキリキリと歯を食いしばるような緊張感の漂う速度域であっても、S1000RRでは静寂な「凪」の世界が広がっているのです。
同じSSであるデイトナ675Rでも似たようなところはありますが、これほど極端ではありません。S1000RRは乗り手の自制心が強く、強く求められる一台だと思います。
余談ながら対極にあるのはCB1100RSで、そこそこの速度域で車体から「これ以上無理するなよ」というフィードバックが返ってきます。それゆえ低い速度域でもスピードの刺激があり、浅いバンク角でコーナーリングの充実感を得ることができます。公道で安全にライディングを楽しむならこうしたバイクが最適です。
ディテール
フロントフォークはマルゾッキ製。なんか微妙にオイル滲んでます?
リアタイヤは極太200サイズ。タイヤ代が思いやられます。
アップ/ダウン双方に対応するオートシフターが標準装備。ダウン側は初めて体験しましたが、スムーズに変速出来ていました。サーキットで有用でしょう。
先代モデルから一転してシンメトリーとなったフロントのルックス。賛否両論あるみたいですが、僕はこの顔が抜群に好きです。
リアビュー。なんとブレーキランプが存在しません。ウインカーがブレーキランプを兼ねていて、ブレーキを握るとウインカーが赤く光るのです。
このウインカーとナンバープレートステーは一体となっており簡単に外すことができるようです。サーキット走行を考慮した構造です。
最後にサイドビュー。うーむ、カッコイイ…。